さて……。
前回は、『かごめ歌』の童謡について色々と話し合ったわけですが、今回も引き続き童謡の都市伝説を語っちゃおうかと思ってるよ!
なに、澄ました顔して仕切り直してるのよ。
前回、あなたが沙耶香さんに言った根も葉もない話の落とし前……まだ、ちゃんと着けてもらってないんだけど?
ギクッ!?
ま、まあ、それはとりあえず置いておきまして……とにかく、早速今回のネタ行ってみよう、そうしよう!!
まったく、本当に調子がいんだから!
で……そのネタって何なわけ?
ま~た、埋蔵金がどうしたとか、そんな下らない話じゃないでしょうね?
いくら私でも、そう同じネタを何度も持って来ようとは思ってないよ。
今日のネタの一発目は、『はないちもんめ』の歌。
幼稚園とか小学校で、一度は遊んだことがあるんじゃないかな?
なんだか、ちょっと懐かしいわね。
でも、確かに亜衣ちゃんの言う通り、誰もが一度は聞いた歌だと思うわ。
『はないちもんめ』の歌の都市伝説ねぇ……。
あんまり気にせず歌ってる気がするけど、やっぱりあれも、『かごめ歌』みたいな裏の意味があるってこと?
ふっふっふ……。
まあ、結論から言ってしまえば、そういうことになりますなぁ……。
ところで犬崎君に沙耶香さん。
昔の単位で『いちもんめ』っていうと、いったい何の単位かご存知ですかな?
『いちもんめ』と言っても色々あるが、仮に『銀一匁』とすれば、金銭の単位と考えていいだろうな。
長さの単位と考えることもできるが……『はないちもんめ』を『花、一匁』と考えた場合、金銭として捉えた方がしっくりくる。
私も犬崎君と同じ意見ね。
江戸時代の銀一匁だとすると、今のお金に直して2000円と少し……。
お花一輪の値段にしては、ちょっと高めかしら?
資料によって換算の方法は色々あるから、確かなことは言えないけどね。
さすが、二人とも鋭いね!
確かにここでの『いちもんめ』は、お金の単位のことだよ。
でも……『銀一匁』が高いっていうのは、果たしてどうかな?
どういうことよ、それ?
お花が2000円もするなんて、今の時代の感覚からしても高めじゃない。
江戸時代の人からすれば、それこそ普段の生活からしても、物凄い贅沢品ってことになるんじゃないの?
照瑠や沙耶香さんが言っているように、お花の値段として考えたら、私も高めだとは思うよ。
でも、ここで歌われている『はな』っていうのは、お花のことじゃないんですなぁ……。
『はな』が花卉のことではないだと?
まさか、お前の言っている『はな』というのは、もしや……。
どうやら、犬崎君は一足先に感付いたみたいだね。
そう、ここで歌われている『はな』は、フラワーショップなんかで売られているお花のことじゃないんだ。
『はな』っていうのは、人身売買で売られる子ども……それも、女の子のことを指しているって言われてるんだよね。
ちょっ……人身売買って、それ本当なの!?
お花ならともかく、人間の値段が2000円ちょっとなんて、いくらなんでも安過ぎじゃない!
だから、最初に訊いたよね?
『銀一匁』が高いっていうのは、果たしてどうかなってさ。
なるほど、身売りか……。
やはりというか、『かごめ歌』だけでなく『はないちもんめ』も、人の心や歴史の暗部を歌ったものであることに違いはない……そういうことか?
もし、亜衣ちゃんの言っていることが本当だったら、まさしくその通りってことよね。
子どもを身売りに出すっていう話は、昔の貧しい農家では当たり前のようにあったらしいし……。
そういう意味では、なかなかリアルな話だと思うわ。
それにしたって、いくらなんでも酷過ぎよ!
お金に困っているからって、2000円かそこらで自分の子どもを売るなんて……。
まあ、実際は『銀一匁』っていうのは頭金みたいなもので、その後に売られた先で稼いだお金の何割かを、実家に送金するって約束だったとする話もあるけどね。
それでも、照瑠の言うように安過ぎるっていうのも確かだと思うよ。
自分の子どもを身売りに出すのは貧乏な農家さんが多かったそうだから……少しでも高く売りたいってことで、仲介人と揉めることも多かったらしいし。
そうか、読めたぞ……。
身売りと人買いという双方の立場で考え直してみれば……あの童謡の、一見して何の脈絡もなさそうな歌にも、きちんと意味があると言えるな。
どういうこと?
『はないちもんめ』の歌詞を、もう一度思い出してみろ。
確か、初めの節は『かってうれしいはないちもんめ』だ。
一見して、その後のじゃんけん勝負に勝てれば嬉しいとも取れる内容だが……『買って嬉しい』という風に漢字を当てはめれば、どうなるかな?
買って嬉しいってことは……。
あっ、もしかして、これって人身売買で子どもを買う側の台詞!?
犬崎君、今日は随分と冴えてるね。
要は、そういうこと。
それじゃあ、次の節はどういう意味だか解るかな?
次の節は、『まけてくやしいはないちもんめ』だったわね。
それだったら……『負けて悔しい花一匁』、つまりは『娘の値段を値切られて悔しい』ってことになるのかしら?
簡単に言っちゃうと、だいたいそんな感じで合ってるよ。
でも、売る側だって、やっぱり本当は娘を売りたくなんかないんだよね。
だから、『そうだんしよう、そうしよう』ってなるわけ。
で、自分の子ども達に誰を売るか……もっと酷い言い方をすれば、捨てるかを聞かれると拙いから、『あのこがほしい、あのこじゃわからん』っていう歌詞に繋がって行くんだね。
うわぁ……。
なんというか、これはこれで『かごめ歌』とは違った悲惨さがあるわね。
まったく、どうして童謡関係の都市伝説って、こんなのばっかりなのかしら?
九条がそう思うのも無理はないだろうな。
だが、童謡という一見して深く意味を考えそうにないものだからこそ、この都市伝説はしっくりくるとも言えるぞ?
まあ、確かに童謡の歌詞の意味なんて、今まで深く考えたことはなかったけど……。
それと、今回の都市伝説と、どんな関係があるっていうのよ?
以前にも言ったが、後世に伝えられる歌というものは、良くも悪くもインパクトの強いものでなければならない。
それに、人間には言いたくても言えない何かを、何らかの方法で人に伝えたり、後の世に残したりしたいという欲求もあるからな。
自分達の無念や悲しみを、なんとかして他人にも伝えたい。
しかし、大声で言ったら憚られるような内容の場合、迂闊に声に出して文句を言うわけにもいかない。
だからこそ、童謡という形で残したのだとも考えられる。
大人の噂話ならまだしも、子どもが遊びで歌うような歌であれば、よほど直接的な表現を用いなければ咎める者もいないはずだからな。
自分達の想いを他の人達に伝えるために、敢えて一見すると意味の解らない歌として残したということね。
なかなか、興味深い解釈だわ。
それだけではなく、嶋本の話が真実なのだとすれば、童謡は一種の忌み歌としての役割も持っていると言える。
直接口に出してはならないことだが、それでも歌が人から人へと伝わって行く間に、誰かが本当の意味に気付くかもしれない。
そんなスリルにも似た人間心理を突いているからこそ、童謡に関する都市伝説がなくならないのかもしれないな。
確かにそうね。
本当に禁忌な内容だったら、そもそも歌にして残すことだってしないはず。
誰かに気付いてもらいたいからこそ、よくよく考えると色々な解釈ができるような歌詞になっているのかもしれないわ。
私達が普段から歌っている歌も、実はまだまだ、隠された意味を込められたものがあるのかもしれないね。
よ~し!
こうなったら、この『歩く都市伝説百科』である亜衣ちゃんが、歴史の彼方に埋没された、新たな都市伝説の真実を『大☆発☆見!』してやりましょうぞ!!
なに、馬鹿なこと言ってるのよ……。
それに、歴史の真実を探るのは結構だけど、その前に後期の期末試験が迫っているような気がするんだけど……そっちの勉強、しなくてもいいのかしら?
ぎゃぁぁぁぁっ!
嫌なこと思い出させないでよ~!!
っていうか、何で毎度の如く、このコーナーの終わりには、試験の到来を予告されることが多いんですかぁぁぁっ!!
それは仕方があるまい。
管理人の都合で、更新が月末に被ることが多いからな。
必然的に、学生の試験期間とも更新日が被りやすい。
要は、そういうことだろう。
まあまあ、亜衣ちゃんも、そう落ち込まないで。
よかったら、今回は私も試験の勉強を手伝ってあげるわよ。
えぇっ、本当!
さっすが沙耶香さん!
話が解りますなぁ!!
ちょ、ちょっと……いいんですか?
あまり亜衣を甘やかすと、後でろくなことにならないと思いますよ?
うふふ、心配しないで、照瑠ちゃん。
確かに手伝うとは言ったけど、甘やかすとは一言も言ってないから。
とりあえず、今夜はマンツーマンで特訓ね。
日本史と古文だったら、朝まで暗記につきあうから安心して。
ひょ、ひょぇぇぇっ!
朝まで暗記なんて……そんなことされたら、勉強の途中で仮眠どころか、そのまま過労で永眠してしまいますぞ!
どうか……どうか、お慈悲を~!!
だ~め♪
折角、こんな面白い場に招待してもらったんだし、何かお礼をしないと申し訳ないからね。
私のことは、全然気にしなくて構わないから、安心してね。
ぎゃぁぁぁっ!
照瑠~、犬崎君~、た、助けて~!!
私はまだ、こんなところで死にたくないぃぃぃっ!
おい、九条……。
あの沙耶香とかいう女……なんというか、見かけによらず随分と強引だな。
まあ、ね……。
ああ見えて、沙耶香さんも意外と行動派なところがあるし……。
これに懲りたら、亜衣もちょっとは自分から勉強するようになってくれると助かるんだけど……。
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