よ~し、これだけ集めれば大丈夫かな?
この前は妙なポスター作ってると思ったら……今度は色々なガラクタを広げて、何を始めようとしてるわけ?
むぅ、ガラクタとは失礼な!
来るべきバレンタインに備えて、今年こそは素敵な恋を実らせるための都市伝説を試そうと思ってたのにさ!!
素敵な恋って……あなた、そこまでして両想いになりたい人でもいるの?
それに、都市伝説の力を使うって……去年の冬、妙な媚薬に手を出して、酷い目に遭ったの忘れたの!?
まあまあ、そう熱くならないでよ。
前回は私の独断で失敗したけど、今回はその道のプロフェッショナルを連れて来てるんだからさ。
プロフェッショナル?
やっほー、お久~♪
二人とも、元気してた~?
み、美月!?
なるほど、確かにあなたなら、この手の話にも詳しそうよね……。
そういうこと。
こう見えても、占いやジンクスに関する話は得意だからね。
嶋本さんが広げているのも、実は私が頼んで用意してもらったものだし……。
ワハハハハッ!
その通~り!!
と、いうわけで……早速ですが、美月殿。
恋愛成就のジンクスについて、色々とご教授願えませぬか?
ええ、いいわよ。
それじゃあ……まずは、この角砂糖からね。
角砂糖?
そんなもの、いったい何に使うのよ?
えっと……とりあえず、紅茶かコーヒーに入れて飲むため、かな?
でも、普通に入れて飲んでも効果はないわよ。
まずはこの角砂糖に、自分の好きな人の名前を彫って……それから、飲み物に溶かして飲まないとね。
ほうほう、なるほど。
では、早速やってみ……うわぁぁぁぁっ!
し、失敗したぁぁぁっ!!
(早っ!?)
ま、まあ、確かに角砂糖に名前を彫るのは、ちょっと難しいかもね。
下手すると、プロの彫刻家顔負けの技術が必要なんじゃないかしら?
まあね。
それじゃ、こっちの大根はどうかしら?
これを好きな人に投げつけると、恋が叶うって話もあるわよ。
だ、大根って……。
そんなもの投げたら、逆に相手の男の人に怒られそうね……。
そうかもね。
でも、気になる人の気を引くのには効果的かもしれないわよ。
よ~し!
それじゃ、早速この大根を手頃なイケメンの頭に向かって……。
ちなみに、投げる大根は1cm角サイズね。
それより大きいと、照瑠の言うように相手を怒らせるだけだから気をつけてね。
むぅ、仕方ないですなぁ。
それじゃ、さっき使ってた彫刻刀で、早速この大根を……って、あぁっ!?
な、なによ、いきなり大声出して。
何か拙いことでもあったの?
うぅ……。
サイコロサイズの大根を切り出そうとしたら、勢い余って自分の指まで切っちゃったよぉ……。
やれやれ。
そんな不器用なんじゃ、細かい技を使って恋を実らせるのは無理ね。
嶋本さんには、もっとお手軽にできるジンクスを教えてあげるわ。
できれば今度は、刃物を使わなくって済むやつでお願いするよ。
ええ、いいわよ。
刃物を使わないんだったら、まずはこの靴クリームね。
これで靴の爪先だけ磨いておくと、街角でイケメンに出会える確率がアップするらしいわ。
単に出会えるだけってのが物足りないけど……まあ、仕方ないですな。
と、いうわけで、早速靴を磨いて来るね~♪
――――数分後
うわぁぁぁっ!
し、しまったぁぁぁっ!
いきなり大声で叫ばないでよ。
いったい、何があったの?
とほほ……。
私の靴、茶色のローファーだってことを忘れてたよ。
うっかり黒い靴クリーム使っちゃったから、先っぽだけ真っ黒になっちゃった……。
う~ん……。
なんだか、爪先だけ犬のフンでも蹴り飛ばしたみたいな感じね。
これじゃ、イケメンが寄って来るどころか、反対に渋い顔して逃げられちゃうかもね。
そ、そんなぁ~!!
後先考えず、なんでもかんでも迂闊に試すのが悪いんでしょ!
これに懲りたら、もう妙なジンクスに手を出すのは止めなさいよ。
うぐぐ……。
でも、このまま黙って引き下がるのも、歩く都市伝説百科の名が……。
なにを張りあってるのか知らないけど、私も程々にしておいた方が身のためだと思うわよ。
それでも知りたいっていうなら……とっておきのを教えてあげてもいいけどね。
えっ、本当!?
いやぁ、やっぱり持つべきものは友達ですなぁ、美月殿♪
まったく、調子がいいんだから!
美月も美月で、あんまり亜衣を煽らないでよね。
まあ、そう言わないでよ。
それに、これから私が教える方法は、実行するのにもかなりの覚悟が必要なやつだしね。
覚悟?
ええ、そうよ。
恋を成就させるのに必要なのは、女子力の高さってことで……満月の日に月の光を全身で浴びると、女子力が大幅にアップするらしいわよ。
なんだ、そんなの簡単じゃん。
夜中に外に出て、月の光を浴びればいんでしょ?
そんなこと、誰にだってできそうな気がするよ。
確かにそうね。
でも……私は言ったわよね。
月の光を『全身』で浴びなさいって。
そうしないと、満月パワーは全然効果がないから気をつけてね。
ちょっと待って!!
全身……ってことは、まさか!?
照瑠の考えている通り、もちろん全裸で浴びないと効果ないわよ。
この時に、恥ずかしがったり中途半端に浴びたりするのも駄目。
自分の全てをさらけ出し、月にその身を捧げるくらいの覚悟が必要なんだとか……。
うぅ……。
確かにそれは恥ずかし……いや、でも、背に腹は変えられないともいいますし……。
う~む、悩むなぁ……。
なに言ってるの!
夜中に全裸で月の光を浴びるなんて、そんなの単なる痴女じゃないの!!
通りがかりの人から、警察に通報されてもしらないわよ!
む、確かにそうだね。
私の裸を見て、変質者が寄って来ないとも限らないし……試すには、ちょっと危険なジンクスかもね。
そういう意味じゃないでしょ!
はぁ……なんか、物凄く頭が痛くなってきたわ……。
――――ガラガラガラ
どうした、お前達。
さっきから、やけに騒がしいな。
あっ、犬崎君!
今日は入間も一緒なのか?
で……いったい、何があった?
なにって……バレンタインにちなんで、恋愛を成就させるジンクスについて話していたんだよ。
なるほど、恋愛成就か。
他力本願で叶えた恋など、所詮は直ぐに冷めると思うがな。
な、なんと夢のないことを!!
他力でもなんでも、女の子にとっては切実な願いなんだよ!!
それこそ、神様でも仏様でも、誰でもいいからお願い聞いてって感じでさ!!
神でも仏でも、か……。
だが、実際に神仏に恋愛の成就を託すのは、あまり良い心掛けとは言えんぞ。
人間と同じで、神仏の中にも嫉妬深い者は多いからな。
縁結びならぬ縁切りで有名な神社等もあちこちにあるし、カップルで弁財天の下を訪れると、嫉妬から破局に導かれる等という話もある。
伊勢神宮や出雲大社、厳島神社に宇佐神社など……恋人と一緒に訪れると破局すると言われている場所は、数え上げれば、それこそきりがないぞ。
うわぁ……。
何も知らないで恋人とお参りに行ったら、それこそ悲惨な結果になりそうね。
まあ、その反対として、恋愛を成就させるための技もないわけではないがな。
もっとも、呪術的な側面が強いので、あまり勧められるものではない。
それこそ、悪魔と契約する覚悟があるなら、試すのも構わんが……。
あ、悪魔と契約って……。
さすがに、それはちょっと……。
ならば、次からは自分の力で願いを叶えることを考えるんだな。
一時の魅力で相手を振り向かせたところで、そんな関係は決して長続きしないだろうからな。
まさか、朴念仁を絵に描いたような犬崎君に、恋愛関係の話で説教されることになるとはね……。
ところで……そういう犬崎君は、誰かからチョコ貰ったりしたの?
チョコレートか?
そういえば、今朝、九条のやつがコレを俺のところに……。
なっ……!?
ちょ、ちょっと!!
なんでそんなもの、わざわざ皆の前で出すのよ!!
なんだ、拙かったのか?
単なる義理だと聞いていたから、特に気にはしないと思ったのだがな。
ま、まぁ……確かにそれは、そうなんだけど……。
って、そういう問題じゃないわよ!!
ならば、どういう問題なんだ?
俺に解るよう、詳しく説明してくれないか?
そ、それは……。
そんなの、簡単に説明できるわけないでしょ!!
少しはこっちの気持ちを察することくらい、してくれたっていいじゃない!!
う~む……。
犬崎君のアレ、恐らくマジなんでしょうなぁ……。
たぶん、本当にな~んにも気づいてないですぞ。
やれやれ。
あんな調子じゃ、これからも先が思いやられるわね。
恋愛成就のジンクスが必要なのって、実は私達じゃなくて、あの二人なのかもしれないわね。
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