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File No.37 …… きさらぎ駅


 季節は、もうすっかり春ね。

 お昼の陽射しも、だんだん温かくなってきたわ。

 昼の陽射しは、俺はどうにも苦手なんだがな……。

 まあ、それでも寒いよりは、温かいに越したことはない。

 これでようやく、校舎裏の木の下で昼寝ができる。

 

 いや、昼寝って……。

 犬崎君、あなたねぇ……ちょっとは真面目に授業受けなさいよ……。

 まあ、春眠暁を覚えずなんて言葉もあるくらいだし、ちょっとくらいは、眠くなるのも仕方ないよね。

 でも、さすがに夜の電車で寝過ごしちゃうと、ちょっと危険な目に遭うかもしれないけど。

 いつになく、真っ当なことを言っているな。

 確かに、終電で転寝をして寝過ごした場合、帰るに帰れなくなることは予想できるが……それは、お前が言うほど怖いことなのか?

 ふっふっふ……。

 確かに、それも困ることなんだけど……実は、もっと恐ろしいことが起きることだってあるんだよ。

 それこそ、油断してると別の世界に連れて行かれちゃうとか、そんな感じの噂がね。


 別の世界?

 電車で寝てたら、そのままワンダーランドに連れて行ってくれるとかいうつもり?

 そんなのだったら、まだ可愛いものだよ。

 照瑠と犬崎君は、『きさらぎ駅』についての話は知ってるかな?

 某巨大掲示板で、ある女の人が実況中継したことが発端になって生まれた噂なんだけど……。


 いや、初耳だな。

 そもそも噂は元より、『きさらぎ』などという駅名は聞いたこともない。


 まあ、それが妥当な反応だよね。

 だって、『きさらぎ』なんて名前の駅は、そもそも日本に存在してないし♪


 本来は存在しない駅……。

 なんだか、ちょっと話がキナ臭くなってきわね。

 とりあえず、順を追って説明するね。

 事件が起きたのは、2004年の1月8日、午後23時14分頃。

 この時間、某巨大掲示板サイトに、『はすみ』ってハンドルネームの女の人から、奇妙な書き込みがあったんだ。


 奇妙な書き込み?

 そう言えば、実況中継がどうのこうのと言っていたな。

 うん。

 その日、はすみさんは静岡県の新浜松駅で、23時40分初の電車に乗ったんだ。

 でも、普段だったら10分くらいで目的の駅に着くはずなのに、何故か20分以上経っても、どこの駅にも停車しなかったんだ。


 20分っていうと、随分な時間よね。

 もしかして、電車を乗り間違えたとか、寝過ごして降りる駅を通り過ぎちゃったとか?

 残念だけど、それは考えられないよ。

 新浜松駅から出てる電車は1本だけだし、はすみさんも寝てなんかいなかったし……。

 ただ、乗客は全員寝ていた上に、アナウンスされる駅の名前も、聞いたことのないものばっかりだったらしいんだ。


 アナウンスされた駅名にも覚えがなかったのか?

 それならば、上りと下りを間違えて乗ってしまったという可能性は……。

 まあ、そう考えるのが普通だよね。

 で、とりあえず不安になったはすみさんも、途中の駅で降りたんだ。

 その駅が、噂のタイトルにもなってる『きさらぎ駅』ってわけ。

 

 一応、変な電車からは逃げられたのね。

 それで……駅に着いたら、その後はどうなったの?

 それが……仕方なくタクシーを呼ぼうとしたんだけど、周りは田んぼばっかりで、車なんて全然走ってなくてね。

 公衆電話もないし、携帯のGPSみたいな機能も調子がおかしくて、現在地を特定することもできなくて……。

 もう、どうにもこうにもならなくて、携帯で某巨大掲示板に書き込みして助けを求めたらしいんだ。

 その後も、アドバイスされるままに警察に電話してみたり、色々したらしいんだけど……結局、110番しても悪戯扱いされるだけで、とうとう自力で帰ることを決めちゃったんだよね……。


 ちょっ……!

 自力で帰るって、それ、随分無謀なんじゃないの!?

 電車で20分のところを歩いたら、それこそ帰る前に夜が明けちゃうわよ!?

 まあ、その辺は覚悟の上だったんじゃない?

 最悪、どこか街に出られれば、タクシーでもなんでも拾えるかもしれないしね。

 そういうわけで、はすみさんは線路に沿って歩き出したんだよ。

 なるほど。

 だが、それだけでは、何ら不思議な話とは言い切れんな。

 単に電車を乗り間違えたか乗り過ごし、見知らぬ街に放り出されただけではないのか?

 ところがどっこい!

 駅に向かって歩き出したら、後ろから祭囃子みたいな音が聞こえて来たんだ。

 おまけに、「線路を歩くのは危険だよ!」なんて声もして、振り向くと、そこには片足のないおじいさんがいたんだけど……それも、直ぐに消えちゃったんだってさ。


 さしずめ、その路線で列車に轢かれた老人の霊というところか。

 だが、単に幽霊が忠告に現れたというだけではなさそうだが……。

 正直、その辺は私にも解らないんだけどね。

 幸い、携帯で電話はできるみたいだったから、父親に電話した上で、警察に連絡してもらったらしいよ。

 結局、その後もはすみさんは歩き続けて、『伊佐貫』っていう名前のトンネルまでやって来たんだ。

 トンネル、ねぇ……。

 まさかとは思うけど、そのままトンネルに入って、二度と出てこなくなったなんて話じゃないでしょうね?

 まあ、そう思うのが普通だよね。

 でも、はすみさんは、なんとかトンネルを抜けることができて、再び掲示板に書き込みを始めたんだ。

 トンネルを無事に抜けたら、その先に誰かが立ってました。

 これで、もう安心ですってね。

 よかった……。

 もしかして、お父さんが連絡してくれた警察の人かしら?

 だとしたら、もう安心ね。

 いや、気を抜くのはまだ早いぞ、九条。

 嶋本は、そこに立っていた誰かが、本当に本物の人間だったとは言っていない。

 先の老人の例もある。

 ここは普通、疑ってかかるのが得策だと思うが……。

 さすがは犬崎君!

 なかなか、鋭い勘をしてますなぁ……。

 でも、恐怖に怯えていたはすみさんは、既に冷静な判断ができなくなっていたんだろうね。

 結局、トンネルを抜けた先で出会った見ず知らずの男の人に助けを求めて、そのまま車に乗っちゃったんだ。


 うわ~。

 それって、もしかしなくても最悪の展開じゃないかしら?

 だいたい、そんな時間に線路の回りをうろついてる人に、まともな人がいるはずないじゃない!

 誘拐されて変なことでもされたら、そっちの方が怖いわよ……。

 まあ、その辺は後々になって、はすみさんも気づいたみたいだね。

 でも、最初に出会った時に地名を聞いたら、ここは『比奈』だって言われて、実在する地名に安堵したのも事実だよ。


 だが、それで万事が解決したわけではないだろう?

 結局、その『はすみ』とかいう女は、その後無事に家まで帰れたのか?

 それが……残念ながら、私にもそこまでは解らないんですなぁ。

 最初、車に乗せてもらった時には普通だった男の人も、だんだんと意味不明な独り言を呟くだけになったらしくてね。

 怖くなったはすみさんは、『隙を見て逃げ出します』と掲示板に書き込んだところで、携帯電話も電池切れ。

 結局、その後は何の音沙汰もないまま、そこで書き込みは途切れちゃったんだ。


 うわぁ……なんか、物凄く後味の悪い終わり方ね。

 変な世界に迷い込んで出られなくなっちゃったのか、それとも変質者に捕まって殺されちゃったのか……。

 どっちにしても、最悪だわ。

 まあ、そうは言っても、あくまで某巨大掲示板に書き込まれた話だからね。

 完全に創作ってことも考えられるし、今では夏の風物詩として、『釣りネタ』として愉快犯的に似たような実況を書き込む人も多いみたいだし。

 だが、完全に嘘とも言い切れんのだろう?

 それに、先程から気になっていたんだが、そもそも駅名になっている『きさらぎ』とは、鬼を意味する言葉でもある。

 異界と鬼……。

 この二つが合わされば、お前達も思い出すものがないか?


 異界と鬼……。

 あっ、もしかして、以前に虐めで自殺した子が引き起こした、『鏡さま事件』のこと!?

 さすがだな、九条。

 あの時、俺は自らの魂だけを『鬼界』と呼ばれる場所へ転移させた。

 そこは現世に恨みを持って死に、鬼となった霊魂達が巣食う異界なんだが……土地や建物に関しては、こちらの世界の生き写しになっていた。


 こっちの世界と生き写し……。

 ってことは、まさか、亜衣の言ってた『きさらぎ駅』も!?

 可能性としては、考えられなくもない。

 静岡といえば、近くには霊峰として名高い富士山もある。

 また、日本神話において、イザナギ神がイザナミ神を追って黄泉下りした際の、黄泉平坂も富士の風穴がモデルだとされている。

 『きさらぎ駅』が、あの世の駅だと考えても、何らおかしくはないだろう。

 そういう話だったら、私もいくつか知ってますぞ。

 『きさらぎ駅』の前の駅と後の駅の名前は、それぞれ『やみ駅』と『かたす駅』

って話もあってね。

 『やみ』は死者の国でもある『黄泉』、『かたす』は古事記に登場する異界、『根之堅州國』を現しているって説もあるんだよ。



 古事記に出てくる異界、か……。

 突拍子もない話だけど、場所が場所だけに、なんというか妙な繋がりを感じちゃうわね……。

 後は、昔実在した『如月』っていう駅が何かの原因で現世に現れて、そこに飲み込まれちゃったって話とかね。

 さっき、『きさらぎ駅』なんて存在しないって言ったけど、実は昔、国鉄の駅で存在してたんだ。

 まあ、今ではダムの工事で村ごと水の底に沈められちゃったから、絶対に行くことはできないんだけどね。


 どっちにしても、奇妙な話ってことに変わりはないわね。

 春の陽気に油断して、電車で転寝してたら異世界に閉じ込められちゃうなんて、ちょっと洒落にならないかも……。

 まあ、その辺りは、俺は特に問題ないがな。

 さすがに異界に飲み込まれるのに気付かないほど、寝ているとはいえ気を許してはいない。

 それに、居眠りで災いを呼び込みそうなのは、むしろ嶋本の方な気もするが……。

 Σうぐっ!?

 で、でも、こんな暖かな陽気の日に、古文の授業なんて子守唄にしかならんのですぞ。

 ちょっとくらい寝ても、罰は当たらない気はしませぬか?

 亜衣……あなたねぇ……。

 普段から、そんな態度だから、試験の時に慌てることになるんでしょ!

 だいたい、そういう不真面目なこと続けてると、今度の試験では私のノートを貸してあげないわよ!

 ちなみに、俺は古文の試験など、勉強せずとも問題なく解けるがな。

 寝ていても問題ないなら兎も角……何もできないのに寝てしまうのは、さすがに浅はかな行為だと思うが?

 う、うわぁぁぁん!

 だって、季節は春なんだし、眠くなるのだって仕方ないじゃん!

 こうなったら、私も異世界へ行ける電車を探してやるんだ!

 そこで、テストのない世界に行ってやるぅ!


 そんな下らないことで、行方不明事件を起こされたら堪らないわよ。

 泣くぐらいだったら、次から真面目に古文の授業を受けることね。

 本ページの画像は、一部、ギャラリー田園調布様キャラメイクファクトリーを使用して作成させていただきました。

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