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File No.24 …… トミノの地獄

 

 う~ん、だんだんと涼しくなって来ましたなぁ。

 今年は残暑もそんなに厳しくなくてなによりだね。

 そうね。

 暑い、暑いと思ってたけど、少しずつ秋が深まって来ている気がするわ。

 こういう日は、静かに詩集でも読みたい気持ちになって来るわね。

 

 おや、詩の朗読とは随分と古風なご趣味をお持ちですなぁ、照瑠殿。

 

 まあ、こう見えても一応は、高校では文芸部に所属してるからね。

 好きな種類の本も、主に古典文学だし。

 

 そういえば、そんな設定もあったけ。

 ここの管理人は、すっかり忘れてたっぽいけど。

 

 確かに、あまり私の趣味が表に出た記憶はないわね……。

 そりゃ、人に理解され難い趣味だってのは、私も感じてはいたんだけどね。

 いやいや、神社の巫女さんの趣味だったら、古風な感じでも悪くないと思いますぞ。

 ただ……詩集の朗読をするんだったら、その題名にだけは気をつけないといけないよ。

 

 どういうこと?

 ふっふっふ……。

 実は、この世には決して声に出して読んではいけないとされている詩っていうのがあってね。

 それを知らずに朗読してしまうと、呪われて近い内に不幸なことが訪れるんだってさ。

 

 なによそれ、気持ち悪いわね……。

 でも、口にしただけで呪われる詩なんて本当にあるの?

 その辺は、私もなんとも言えないね。

 ただ、『トミノの地獄』って詩は本当に危ないらしくって……怪談話をネタするようなインターネットのサイトでも、絶対に朗読しないようにって強く注意しているところが多いんだ。

  地獄、ね……。

 なんだか意味深なタイトルだけど、それだってあくまでネットの噂でしょ?

 本当に読んで亡くなった人がいるとかなら、話は別なんでしょうけど……。

 いや……それが、実はいるんですなぁ……。

 しかも、その辺のどこの誰とも知らない人なんかじゃなくて、物凄く有名な劇作家の人が……。

 

 えぇっ!?

 そもそも、この『トミノの地獄』っていう詩は、西條八十って人が『砂金』っていう詩集に載せた詩なんだよね。

 それを声に出して読んでしまった人の中に、なんと劇作家の寺山修二さんもいるんだ。

 あの人も、五十歳にならずに亡くなったって言われているけど……その原因が、実は『トミノの地獄』を朗読したからなんじゃないかって、実しやかに囁かれているんだとか……。


 なんか、物凄い話になって来たわね……。

 でも、本当にそうなのかしら?

 いくらなんでも、そんな有名な人が呪いで亡くなったなんて……ちょっと、信じられないんだけど。

 

 

――――ガラガラガラ……。

 

 

 

 ほぅ……。

今回は、口に出して読むと呪われる詩の話か?

なかなか興味深いな。

 

 あっ、犬崎君!

 もしかして、犬崎君も『トミノの地獄』について、何か知ってるの?

 

 

 まあ、俺も幽霊だのなんだを相手にするのを生業としているからな。

 その手の話は一通り聞き及んでもいるが……。

 おお、これは心強い!

 それじゃ、早速だけど聞いて良い?

 朗読すると呪われる詩って、本当にあるの?

 そうだな……。

 結論から言わせてもらうと、俺の知る限りではそんな詩など存在しない。

 朗読しただけで呪われるような詩を作るなど、プロの呪術師でもなかなかできるものだとは思えんしな。


 そ、そんなぁ……。

 だったら、『トミノの地獄』に纏わる話っていうのは、全部嘘だったんでありますか!?

 あくまで、結論だけ言えばの話だがな。

 だいたい、声に出して読んだら凶事が起こるというならば、むしろ密教の真言の方がよほど危険だぞ。

 あれは修行を積んだ僧侶が唱えて、初めて力を発揮する。

 つまり……何の力も持たない凡人が唱えれば、それこそ仏罰が下り兼ねんからな。


 で、でも、でも!

 それじゃあ、劇作家の人が亡くなったり、この詩を朗読して気分が悪くなった人がいるっていうのは、いったいどう説明するのさ!?

 前者に関しては、これは完全な創作、噂話の類に過ぎないと考えた方がいいだろうな。

 そもそも、この詩が呪われている等という話は、作者本人が詩を世に発表した際には語られてなどいなかったはずだ。

 後世になって、何かの書籍媒体を通して、そういう形で詩が世に広められてしまったのが原因だろう。


 

 なるほどね。

 やっぱり、誰かが流したデマってことか。

 そう考えるのが妥当だろうな。

 後者にしても、最初から『これは呪われた詩だ』と思い込んで朗読すれば、おのずと不安な気持ちにさせられる。

 そういった心理的作用から、なんとなく気分を害する者がいても不思議はない。

 俗に言われる『こっくりさん効果』の話は、今までも再三に渡って説明して来たはずだ。


 

 う~む……。

 なんだかバッサリと言い切られちゃって、反論する余地もありませんなぁ。

  まあ、当然の結果よね。

 ところで……その、『トミノの地獄』って詩だけど、いったいどんな内容なのかしら?

 呪われた詩なんかじゃないっていうなら、ここで紹介しても平気よね?

 いや、それは止めておけ。

 著作権……といったリアルな話は別にしても、思い込みの激しい人間が読めば、本当に気分を害し兼ねん。

 あまり大声では言えないが、『口から血を吐く』だの『地獄に堕ちる』だの、少々過激とも思える表現が使われているのは確かだからな。

 うわぁ……。

 そりゃ、気の弱い人が読んだら、作者の精神状態を疑ってもおかしくないわね。

 それにしても……いったい、なんでこんな詩を書いたのかしら?

 一説によると、作者がこの詩を書いた当時は戦時中で、徴兵の知らせが迫っていたらしいな。

 そこで、戦場を地獄に見立てた上で、『兵隊になって万歳!!』と心にもないことを叫ぶ家族の様子を、口から血を吐くだの鞭で打つだのといった表現に置き換えて書いたとも言われている。

 そっか……。

 要するに、『声に出して読んだら呪われる詩』じゃなくて、本当は『戦争の悲惨さを書いた詩』だったってことね。

 そんな詩だったら、確かに元気良く朗読する気にはなれないわ……。

 まあ、これもあくまで一つの仮説に過ぎんがな。

 ただ、そう考えると『声に出して読んだら呪われる詩』という噂が立ったのも、納得できそうなものではあるぞ。

 

 どういうことさ?

 呪いの歌の話はデマだって、さっき犬崎君が自分で言ったばっかりじゃん!

 確かに、噂は噂に過ぎんとは言った。

 だが、問題なのは、そんな噂が立ってしまった背景だ。

 望まぬ戦争に行かされることになり、しかも最愛の家族は味方してくれず、ともすれば自分を戦地に送り出そうとする。

 もっとも、家族としても、実際は複雑な心境だったのだろうが……それを解っていたところで、作者自身、そう簡単に割り切れるものでもないだろう。


 自分を意気揚々と死地に送り出す家族、か……。

 今の私達からすれば異常なことだけど、それでも、当時はそれが当たり前だったのよね。

 無論、それらに疑問を抱いていた人間も多かったはずだが、当時はそれに真っ向から異を唱えることは難しかっただろうがな。

 ましてや、戦争に対する一種の憎悪とも受け取れるような嫌悪を表現するには、直接的な言葉の使用は可能な限り控えなければならない。

 真っ向から政府を批判し、戦争に対する憎悪を表現すれば、当時はその時点で刑務所行きになることさえあったはずだ。


 うへぇ……。

 私達は学校の日本史の授業で軽く習うだけだけど、実際は想像以上に壮絶な時代だったんでしょうなぁ……。

 そういうことだ。

 それに、詩人というのは芸術家でもあるからな。

 詩でなく、より視覚的な絵を例に挙げた方が解り易いか?

 画家ではピカソ等も有名だが、例の崩れた顔の画風で描かれたゲルニカなども、見方によっては静かな狂気を感じさせる。

 あれもまた、戦争の惨禍を目の当たりにして描いたということらしいが……俺達とは別の感性を持った人間からすれば、本当に目の前の光景が、あの絵のように映っていたのだろうな。


 

 ほぇ~。

 ゲロカニなんてお下品そうな名前の絵なのに、なかなかどうして奥が深いんですなぁ~。

 

 いや、ゲロカニじゃなくてゲルニカだから……。

 いくらなんでもその間違いは、ちょっと一般常識なさ過ぎだと思うわよ、亜衣……。

 放っておけ。

 嶋本のそれは、今に始まったことではないだろう?

 まあ……とにかく、そういった戦争への嫌悪、憎悪を隠して書かれた詩であれば、読む側に一種の恐怖感を覚えさせてもおかしくはない。

 それに、この仮説が正しければ、呪いの詩という話が出回ったのも、また説明しやすくなるというものだ。


 

 そういえば、そっちの理由をまだ聞いてなかったわね。

 理由といっても、至って簡単なものだがな。

 一見して作者は家族……この場合は詩の中に出て来る姉や妹を憎んでいるように思われがちだが、実際は違うだろう。

 少なくとも妹に対しては、後に恋しがるような描写も出て来る。

 これらのことから考えて、作者の嫌悪と憎しみは、戦争を行う者、それを認める社会……そういった、諸々の形のない存在に対して向けられていると考えてもいいのではないか?

 誰か特定の個人に怒りをぶつけるのではなく、世界全体に対してやり場のない気持ちをぶつけているんだ。

 そういった、向かう先のない想い……。

 何も知らない者が読めば、畏怖や畏敬の念を覚えずにはいられんだろうな。

 それこそ、異形の怪物を目の当たりにした時のような、美しくも残酷な存在を前にした時のような……。


 美しくも残酷、か……。

 最初は下らない噂話だと思ってたけど、なかなかどうして深いわね。

 さすがに、『トミノの地獄』を声に出して読む気にはなれないけど……いつか、その詩の作者の人が出した詩集を、ゆっくりと読んでみたいものだわ。

 ふっふっふ……。

 ゆっくりと朗読、ねぇ……。

 果たして、本当にこれで全て終わったと思っているのですかな、照瑠殿?

 なによ、急に気持ち悪い顔して。

 この詩が呪いの詩なんかじゃないってことは、さっき犬崎君が説明したばっかりじゃない!

 確かに、『トミノの地獄』に関してはそうだろうね。

 でも、世の中には、まだまだ照瑠の知らない都市伝説がた~くさんあるんだよ。

 それこそ、普段から何気なく歌っているけど、実は恐ろしい意味が含まれた歌詞の歌なんてのは……。

 冗談止めてよね。

 そんな詩がそこら中にあるんじゃ、おちおち音楽の授業で歌を歌うこともできないじゃない!

 

 まあ、その辺の話は次回ってことで。

 今度は久しぶりにスペシャルゲストを読んでおくから、そっちもお楽しみにね~♪

 スペシャルゲストか……。

 入間の前例があるから大丈夫だとは思うが、とりあえず期待しないで待たせてもらうことにしようか。

 本ページの画像は、一部、ギャラリー田園調布様キャラメイクファクトリーを使用して作成させていただきました。

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