う~む……。
どうしたの、亜衣?
珍しく、深刻な顔しちゃってるけど……。
いやはや、照瑠どの。
九条神社の現状を考えれば、ブルーな気持ちにもなりまずぞ。
どういうこと?
どういうことも、こういうこともないよ!!
せっかく私が都市伝説講座を始めたのに、お客さん、全然来ないじゃん!!
なんだ、そんなこと……。
だったら、別に気にしなくてもいいんじゃないの?
まだ始めて三回目なんだし、そもそもこんな一部の人の趣味にしか合わせて
作ってないサイトなんか、訪れる人の方が稀でしょう?
いや、そうとも言い切れませんぞ。
もしかすると……やっぱり神社の鳥居なんかを、入口にページに設置したことが原因かもしれないんだからね。
なによ、それ。
それじゃあ、まるで私の神社が呪われているみたいな言い方じゃない!!
呪われている、か……。
まあ、言い方によっては、確かにそういう表現もできるだろうね。
なにしろ、今日のテーマはまさしくそんなホームページの話。
題して、『呪いのサイト』の話なんだからさ。
呪いのサイト?
なんなの、それ?
なんなのって言われても困るんだけど……とにかく、名前の通り、開いたり見たりすると呪われちゃうって言われているサイトだよ。
一説によると、そのサイトの入口にはどこかの鳥居の写真が貼ってあって、そこをクリックして中に入ると……後は、何か不吉なことが起きるって話だね。
げっ……。
と、いうことは、もしかして九条神社のページが、その呪いのサイトってやつと勘違いされてるかもしれないってこと!?
うん。
でも、この話にも色々とバリエーションがあるんだよ。
最初に伝わった話は、もっとシンプルなやつで……なんだか知らないけど真っ白なページの一番最後に、どこかの鳥居の写真が貼ってあるんだってさ。
それで、その写真と同じ鳥居を見つけ出さない限り、呪いが降りかかって色々と悪いことが起きるんだって。
呪いのサイトの話としては、むしろこっちの方が有名かもね。
さっきの話とは随分違うけど、共通点は鳥居の写真ってことね。
そんなのと九条神社のページを一緒にするなんて、随分と失礼な話だわ!!
そうだね。
でも、呪われた人にとっては他人事じゃ済まないんだから、必死になる気持ちもわかるかもよ?
実際、このサイトを見たっていう人の体験談の中には、相当ヤバいものも含まれているんですぞ。
相当ヤバいって……まさか、本当に死んじゃったりした人が出たわけ!?
さすがに、それはないみたいだね。
でも、呪われた人の中には交通事故に遭って車が壊れちゃった人とか、『滅』の字を半紙に書いて何度も燃やさないと呪いが解けなかった人とか……酷いのになると、サイトを見たときに使っていたパソコンが、原因不明の故障に見舞われて壊れちゃったなんて話も聞くよ。
な、なんか、随分と壮絶な話になって来たわね……。
ところで、そのサイト。
いったい、いつ誰が、何の目的で作ったのかしら?
さあ、わかんない。
なんでも、そのサイトの管理人は既に死んじゃってるらしくて、今はどこの誰が管理しているかも不明なんだってさ。
その上、URLもコロコロ変えるらしくって、サーバー管理者に削除依頼を出しても焼け石に水。
後は、そのサイトには掲示板もあるらしいんだけど……読んでいるだけで憂鬱になるような内容がたくさん書きこまれていて、その内に、読んでいる人の体調まで悪くしちゃうって言われているよ。
さ、最悪……。
そんなのと一緒にされるなんて、失礼にも程があるわよ!!
うむ、照瑠殿のお怒りも、まさしくごもっともでごさいますな。
ただ、こういった妙なサイトの噂は、以前から色々なところで語られていたみたいだからね。
今さら私達がどうこう言ったところで、直ぐに新しい呪いのサイトの噂が生まれるんだろうね。
なるほど、呪いのサイトの噂か。
まさしく、インターネットが普及した現代ならではの噂だな。
出た……。
なんだ、九条。
今日は驚かないみたいだな。
そう何度も、同じパターンで驚いたりしないわよ。
それよりも犬崎君。
あなた、いつもどこから湧いて出てくるわけ?
私にとっては、そっちの方が不思議で仕方がないんだけど……。
そいつは企業秘密だな。
ところで……嶋本の話していた呪いのサイトの話だが、こいつは正にインターネットの普及した時代だからこそ語られるようになった噂と言えるだろうな。
それ、さっきも言ってたわよね?
やっぱり、ネット社会の発達が、そういった類の噂を生んだのかしら?
そうだな。
インターネットというやつは、顔が見えないのが特徴だ。
掲示板にしろホームページにしろ、誰がどこで、何を考えて書き込みをしたり設置をしたりしているかわからない部分がある。
だから、普段は見せないような自分の内面の負の部分をさらけ出してしまうこともあるし、不特定多数の人間に対して非礼を働くことに対しても、あまり罪悪感を覚えない。
なるほどね。
そう言われてみると、確かにちょっと納得かも。
呪いのサイトの真偽は置いておくとしても……それを作った人が、愉快犯的な考えから妙な話を広めたとしてもおかしくはないわ。
そういうことだ。
仮に、本当にそのサイトが存在し、それを見た人間が呪われるとしても、サイトを作ったやつは誰かを呪いたかったわけではないだろう。
ただ、自分の作ったサイトによって、誰かが『自分は呪われてしまった!』と思い込む。
そうやって、他人がパニックになっていく様を想像して……色々と楽しんでいるんだろうな。
酷いわね、それ……。
人を困らせてにやにやするなんて、その人の人間性を疑うわ。
でも、犬崎君の言っていることも、あながち嘘ではないかもしれませんぞ。
さっきも言ってましたが、ネットの中ってのは顔が見えませんからなぁ……。
呪いのサイトってやつは、ネット社会に潜む人間の悪意が生み出したような噂なのかもね。
ネット社会の悪意か……。
確かに、顔が全然見えないぶん、妙に気持ちの悪い感じがするわよね。
まあね。
ただし、これで呪いのサイトの噂が嘘だったっていう、完全な証拠にはならないのも確かだよ。
誰かの悪意云々関係なく、もしかすると、本当に本物の呪いのサイトだって存在するかもしれないのですから!!
今後も、引き続きリサーチが必要な件ではありますな。
また、そんなこと言って……。
言っておくけど、私はそういうの好きじゃないからね。
これ以上妙な詮索するんだったら、自分一人でやりなさいよ。
むぅ、ノリが悪いですなぁ……。
まあ、いいや。
とりあえずは、何かヒントでも転がってないかと思って、お気に入りの『都市伝説系サイト』の掲示板に質問を書き込んでおいたからね。
今からそれを、ちょっと確認してみましょうぞ。
―――― 数分後、亜衣のノートパソコンの前で……
おっ、さっそくレスを発見!
『ここに詳しいことが載ってますよ』とな。
どれどれ……。
ちょっと、亜衣!
そんな得体の知れないURL、やたらクリックして平気なの?
まあ、たぶん大丈夫でしょ。
一応、私のパソちゃんはウィルス対策も万全だしね。
だとしても、リンクの先が安全って保証はないわよ。
さっきの話じゃあるまいし……。
それこそ、本物の呪いのサイトに繋がっていたら、どうする気?
だから、大丈夫だってば。
と、いうわけで、さっそくリンク先に飛んでみるよ。
ポチっとな……。
おい、嶋本。
いきなり画面が砂嵐になったが……なんなんだ、これは?
う、うわぁぁぁぁっ!!
これ、情報サイトへのリンクなんかじゃなくて、ただのブラクラじゃん!!
なんで!?
どうして!?
ああ、私の愛しのパソ様がぁ~!!
だから言ったでしょうに……。
呪いのサイト云々の話を人に話すより、まずは自分自身で現実的な問題に注意しなさいよ……。
ネットの恐怖と、そこに潜む悪意について語り合っておきながら、言ったそばから自爆するとはな。
こいつには、過去の経験から何かを反省して学ぶということを、期待するだけ無駄なのかもしれん……。
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