果てさて、前回よりだいぶ日が経ってしまいましたが、お約束通り『新世代UMA』について語らせてもらいましょうぞ。
今回は随分と唐突ね。
そして、あの妙な被り物は、今日は持って来てないのね。
まあね。
だって、今日は別に馬とか関係ないし。
それは前回も同じことだと思うが……。
それよりも、これほどまでに調査に時間が掛かったのは何故だ?
まさか、直々に渡米してまで調査を進めていたというわけでもないだろうが……。
単に、ここの管理人の都合だよ。
普通の人とは違って、春休みの方が忙しいみたい。
下手すると、ほとんどの食事は栄養ドリンクとコンビニ飯になるんだとか……。
そういうメタな発言、嫌われるわよ……。
で、そんな酷い生活を送りながらも、なんとか調査は続けていたってわけね。
まあ、そういうことだね。
それじゃ、これ以上は待たせるのも悪いから、早速紹介して行くよ~♪
新世代UMAは、アメリカのUMAと言っていたな。
俺はアメリカのことには詳しくないが……いったい、どのようなUMAが知られているんだ?
とりあえず、時代的に古いやつから紹介して行くね。
まずは、ニュージャージー州に現れると言われる翼を持った怪物、ジャージーデビル!
馬に似た顔とコウモリの翼を持った怪物なんだけど、実は人間の子どもだって話なんだよね……。
やっぱり、馬が出て来るんじゃないの……。
でも、そんな化け物が人間から生まれてくるなんて、正直信じられないんだけど……。
いや、そうとも言えんぞ。
人間と妖怪のハーフのような存在が生まれて来る例は、日本でも江戸時代辺りに確認されている。
件(くだん)と言って、生まれると直ぐに何らかの予言を残し、そのまま息絶えると言われている妖怪だな。
もっとも、この件は人間以外の動物からしか生まれないとする説もあるので、人が妖怪の子を産み落とすことの真偽は俺にも不明だが……
ほうほう、なかなか興味深い話ですなぁ。
でも、残念だけど、今回の話は妖怪とは関係ないんだよね。
UMAは、あくまで『未確認生物』。
オカルトや超常現象の類とは違うってことは、犬崎君も知ってるでしょ?
まあな。
だが、それならば、そのジャージーデビルとやらはいったい何なのだ?
まさか、人間の突然変異種と言うわけでもないだろうが……。
さあ、それは私にも判らないね。
それに、ジャージーデビルが人間のお腹から産まれて来たっていうのも、どうも後付けらしいんだよね。
最初は『子ども達が森で拾った奇妙な卵』から孵化した生物が、育てて行く内にだんだんと凶暴化して、最後は家の屋根を突き破って飛び去ったって話だったみたい。
奇妙な卵、ねぇ……。
羽が生えて飛んでったってことは、フクロウか何かだったんじゃないの?
あり得る話だな。
もしくは、大きなコウモリでも見間違えたか、はたまた子ども達による完全なホラ話だったか……。
むぅ、二人とも夢がないですなぁ!
確かに、この話だけじゃ信じろっていうのも無理なんだろうけど……ジャージーデビルは、実際に騒動になった話も多いんだからね!
古くは1700年代に海軍の将校が遭遇したって話から、新しいものになると2007年にも出現が確認されているんだよ!
1700年代って……その頃の日本、まだ江戸時代じゃない!?
そんな時代からある話が今も伝わってるなんて、ちょっと意外だったかも……。
だが、古くから伝わる話というのは、世代を重ねる毎に脚色されて行くのが常だろう。
日本の妖怪達がそうであったように、ジャージーデビルもまた、その本当の話が何なのかを探るのは難しいと思うがな。
ま、まあ、確かにそうなんですが……でも、アメリカのUMAはこれだけじゃないよ!
1900年代になってから、UMAの目撃情報は一気に増えるんだから!
今度はそれを、順に紹介させてもらうね。
1900年代……。
ちょっと、時代が飛んだわね。
うん。
この頃から、アメリカでは徐々に宇宙人ネタも人々の間に広まって行ったみたいだからね。
それに合わせて、UMAも新しいタイプのものが現れ始めたんだ。
宇宙人ネタに触発されたUMAということか?
いったい、どのようなものが存在するんだ?
トップバッターは、1966年にウェストバージニア州で確認されたモスマンだね。
地元では単に『バード』って呼ばれてたらしいけど、マスコミを通じて蛾人間っていう名前で紹介されたのが広まったみたい。
蛾人間って……いくらなんでも、それはちょっとUMAとしては逸脱し過ぎじゃないかしら?
ネッシーや雪男の仲間っていうよりは、人面犬に近い何かを感じるんだけど……。
まあ、確かにね……。
一説によると、宇宙人の尖兵とかペット、もしくは宇宙人そのものとも言われているからね。
一時期は映画まで作られて大騒ぎになったみたいだし、最近になって現れた新手のUMA、『フライング・ヒューマノイド』とも共通点が多いんだ。
羽の生えた人間か……。
骨格的に考えても、およそ地球の生物とは思えんな。
昆虫が巨大化したものと言えば、一応の説明は付きそうだが……そもそも昆虫のような節足動物は、地球の重力下で人間サイズに巨大化することは、身体の構造からして不可能だ。
宇宙人説が生まれるのも頷けるが、信憑性としては、やや疑問を感じるな。
うぐぐ……。
正直、そう言われると、私も反論できないんだけどね。
地元の人にも『先住民であるインディオの呪いで凶暴化したサンダーバード』なんて話を持ち出す人もいて、オカルトなんだかSFなんだか判らなくなってるみたいだし……。
なんというか、そうなって来ると急に信憑性が薄れるわね。
オカルト絡みなら、やっぱりUMAじゃなくて妖怪の仲間なんじゃないの?
う~む……。
それじゃあ、更に時代を飛ばして、最近になってから発見されたUMAを挙げてみるね。
照瑠や犬崎君は、『チュパカブラ』って聞いたことない?
なんだか、どこぞの棒付きキャンディーみたいな名前ね。
悪いけど、私は全然知らないわよ。
なんだ、残念。
未確認生物の中では、割と有名なやつなんだけどね。
南米で目撃が確認されていたんだけど、1990年代に入ってから、プエルトリコで発見されて北米にも現れるようになったらしいよ。
時代を重ねつつ、徐々に移動しているということか?
ところで、そのチュパカブラとやらだが……いったい、どのような生物なんだ?
チュパカブラっていうのは、スペイン語で『山羊の血を吸う者』っていう意味だよ。
その名の通り、吸血性の怪物で……家畜を襲って生血を吸う他に、驚異的なジャンプ力や赤い目玉、全身が毛に覆われていて、背中に棘が生えているなんていう特徴があるよ。
これまた、随分な未確認生物ね。
モスマンよりはマシだけど、それでもやっぱり、地球の生物とは思えないわよ。
話を聞く限りじゃ、子どもが描いた宇宙怪獣の落書きが、そのまま現実に飛び出したみたいな姿じゃない。
なるほど、宇宙怪獣ですか。
なかなか鋭いですなぁ、照瑠殿。
なによ、いきなり気持ち悪い顔して。
まさかとは思うけど……このチュパカブラも、宇宙人の仕業だなんて言うんじゃないでしょうね?
ふっふっふっ……ご名答!
実際、リトルグレイタイプの宇宙人に似ているとも言われているから、亜種じゃないかって考えもあるみたいだね。
その他には、軍の開発した生物兵器が脱走したなんて話もあるけどね。
またしても宇宙人か……。
なんでも宇宙人のせいにしてしまうのも、俺はどうかと思うがな。
それに、裸の宇宙人というか、宇宙生物に似た怪物なら、日本でも発見されたことがあるぞ。
確か、『ニタゴン』とかいう名で……その正体は、皮膚病になって毛が抜けた狐だったらしいがな。
皮膚病の狐って……。
正に、幽霊の正体見たり何とやらね。
亜衣の言ってるチュパカブラも、どうせ誰かが狼とかコヨーテなんかを見間違えただけじゃないの?
爪とか毛とか、少しでも証拠があれば信じるけど。
うむむ、証拠ですか……。
一応、チュパカブラのものらしき毛や骨なんてのは、発見はされているんだよね。
ただ、ほとんどが偽物の類で、それ以外の物も風化が酷かったりで……結局、正体は判っていないんだ。
まあ、だからこそ『未確認生物』なんだろうがな。
しかし、それにしても今回の話は、どうにも妙な違和感が拭えんな。
従来の未確認生物とは違い、アメリカの未確認生物達は、生物としての概念を超越したものが多い気がするのは気のせいか?
確かに、言われてみればそうね。
それに、最近のやつは宇宙人絡みの話になってるのも多いし……この辺に、謎を解く鍵があるのかしら?
二人とも、なかなか面白いところに気が付いたね。
確かにアメリカのUMAは、宇宙人絡みになる話が多いとは私も思ってるよ。
後は、政府の改造した生物兵器なんてのも人気があるネタだね。
近年になって発見されたUMAだと、『スカイフィッシュ』なんてのも当てはまるかな?
別名、フライングロッドとも呼ばれていて……超高速で空中を飛び回る、変な魚みたいな恰好をした生物なんだけど……その正体は、小型宇宙船なんていう説まであるくらいだからね。
やはり、最後は宇宙人か……。
とりあえず、判らないことは宇宙人のせいにしておけばよいという、安易な発想な気もするが……アメリカのUMAは、どれもこんな具合なのか?
まあ、必ずしもそうとは言い切れないんだけど、犬崎君の言ってることも間違いじゃないと思うよ。
中には『水性怪獣チャンプ』とか、『猿人ギガントス』なんて話もあるけど、これはこれで、ネッシーや雪男の二番煎じな感じだしね。
二番煎じ……なるほど、そういうことか!
ちょっと!
なに、一人で勝手に納得したような顔してるのよ!?
ああ、すまん。
だが、嶋本の言葉で、何故アメリカに宇宙人ネタが多いのかは理解できた。
これは一重に、歴史の浅さが原因なのだろうな。
歴史の浅さ?
考えてもみろ。
そもそも今のアメリカは、移民達の開拓によって新しく作られた国だ。
だから、アジアやヨーロッパと比べても、伝統という点では幾分か劣る。
未確認生物の話にしても、作ったはいいが、それに信憑性を持たせるような後付け設定を生むだけの歴史がない。
結局、何をやっても二番煎じにしかならないということで……最後は他国にないアメリカだけの特色として、『宇宙人』という色を添える必要があったのではないか?
なるほどね。
アメリカには、重んじたくても伝統がない。
だから、どんどん新しい妙な生物を考え出して、その理由付けとして宇宙人が必要だったってわけね。
まあ、全ての未確認生物を、宇宙人ネタを絡めた捏造だと言うつもりはないがな。
宇宙人も生物である以上、広い目で見れば未確認生物だ。
日本のように妖怪話ができる土壌ではないからこそ、宇宙人を扱った話だけが残ったとも考えられる。
ほうほう、確かに言われてみればそうですなぁ。
呪いとか祟りを信じないアメリカの人達にとっては、宇宙人の方が、まだ信憑性があるのかもね。
SFもオカルトも、知らない人からすれば一緒かもしれないけどね。
神様を信じるか、それとも宇宙人を信じるかってことの違い程度なのかしら?
困った時の神頼み……ならぬ、宇宙人頼みってことですな。
とりあえず、何かあったら宇宙人のせいにしておけばいいってことで……きっと、私の数学の試験が悪いのも、素敵な彼氏ができないのも、ぜ~んぶ宇宙人のせいなんだよね、うん!!
亜衣、あなたねぇ……。
いくらなんでも、それはちょっと無理があり過ぎると思うわよ……。
そっとしておけ、九条。
ああやって現実から逃避することでしか、人は救われないこともある。
なんか、それも随分と悲しい感じがするけどね。
今に宇宙から妙な電波を受信して、変なこと始めなきゃいいんだけど……。
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